森下翔太の22号ホームランをAIで骨格解析してみた|「確信歩き」の裏側をデータで見る

スイング解析

7月9日、東京ドーム。阪神・森下翔太が巨人戦で放った22号2ラン。打った瞬間にバットを置いて歩き出す、いわゆる「確信歩き」の一発でした。

これで2戦連発。本塁打王争いは独走状態です。

ニュースやSNSでは「飛距離がすごい」「確信弾や」と盛り上がっていましたが、このブログはひと味違う角度からいきます。あのスイング、AIで骨格解析したら何が見えるのか?

「スコアの向こう側」第1回、いってみましょう。


どうやって解析するのか

使うのはGoogleが公開している姿勢推定AI「MediaPipe」です。映像に映った人間の関節33点(肩・腰・手首・膝など)の位置を、1フレームずつ座標データとして抽出できます。

つまり、テレビ中継の映像が「数字の列」に変わるわけです。

今回はハイライト映像から森下のスイングを約250フレームぶん解析し、そこから抽出した骨格データをもとに、グラフや骨格図はすべて自作しています(中継映像そのものは著作権があるため掲載しません。映像は各局の公式配信でどうぞ)。

スイングを5コマに分解する

まずは抽出した骨格データから、スイングの5局面を並べたのがこちら。

構え → 始動 → 回転 → インパクト → フォロー。

センターカメラ(投手側)から見た骨格なので、注目してほしいのは体の「見かけの幅」の変化です。構えの時点では肩のラインが投手に対して閉じていて細く見え、回転が始まると一気に正面を向いて幅が広がる。この「閉じたまま我慢して、一瞬で開く」がパワーの源泉です。

そしてインパクトからフォローにかけても、下半身の形がほとんど崩れていません。軸がブレないから、打った瞬間に打球の行方が分かる。確信歩きは伊達じゃないということです。

手首スピードは「インパクト直前」に爆発する

次に、手首の移動速度を時系列で追ったグラフがこちら。

面白いのは、スイング開始からしばらくは速度がさほど上がらず、インパクト直前のごく短い時間に一気にピークへ達することです。

これはバッティングの教科書でいう「ヘッドが走る」状態。腕力で最初からフルスロットルにするのではなく、体の回転で生んだエネルギーを最後の最後に手首からバットへ解放する。ムチがしなるイメージです。

腰と肩の「開き」を重ねてみる

最後に、腰と肩の開き具合を同じ時間軸に重ねたグラフです。

理想のスイングは「腰が先に回り、肩が追いかける」運動連鎖(キネティックチェーン)だと言われます。今回のデータでは、腰と肩がほぼ同時に立ち上がる形になりました。

……と言いたいところですが、ここは正直に書きます。この映像では腰→肩の時間差までは測り切れませんでした。 センターカメラの正面アングルでは腰が捕手と重なって検出精度が落ちること、映像が実質50fps程度で数十ミリ秒の差は分解能の限界であることが理由です。

データ分析で一番やってはいけないのは、「それっぽい数字」を断言してしまうこと。測れなかったものは測れなかったと書きます。

次回はサイドアングルのスロー映像を使って、この運動連鎖のタイムラグ計測にリベンジする予定です。

数字で見ても森下は「本物」

骨格解析だけでなく、公開されているデータも森下の異常さを裏付けています。今季序盤の時点でハードヒット率(強い打球の割合)は50%超、セイバーメトリクスの総合打撃指標でもリーグ屈指の数字を叩き出し、7月頭の時点でリーグトップの本塁打数・打率3割超をキープ。オールスターのファン投票では2年連続で12球団最多得票です。

スイングの質(骨格データ)と結果(成績データ)が、きれいに一致している打者。それが今の森下翔太です。

次の一発をリアルタイムで見るために

正直、森下の打席はハイライトで見るのがもったいないレベルに入っています。打席に入る前のルーティン、追い込まれてからの対応、そして打った瞬間の確信歩き。あれは生で見る「間」も含めて面白い。

阪神戦を全試合追うなら、DAZNスカパー!プロ野球セットが定番です。私はデータ取り用も兼ねてフル活用しています。23号が出たら、また解析します。


本記事の骨格データは公開映像からMediaPipe(Google)を用いて筆者が独自に抽出・可視化したものです。数値は撮影アングル・映像品質の影響を受けるため、参考値としてお読みください。

「スコアの向こう側」は、データ解析で野球観戦がもっと面白くなるブログです。

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